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仮にレーダー捜索においてコードの全点をレーダー映像上で表示させるためには、図3−5のレーダー画面の中心からブラウン管の周辺(半径)に相当する観測可能な最大距離を決める「観測レンジ設定」を12NMなどに設定した捜索が行われる。図3−5の右の画面が示すこの遠距離対応の初度捜索の段階では、次項で解説する原理により図3−5のSART応答波の周波数の主掃引部分がレーダー受信器を通過して作られる広点Wdだけによる等間隔多点が表示され、捜索船は救助のためにこの点列の方向に全速で接近することになる。
捜索船がSARTに接近すると、より精度の高い距離情報を得るためにレンジ設定を3NMなどに切り替える。SART(遭難者)の真の位置は、このレンジの切り替えで至近距離の電波の強い場合だけに現れる図3−5の狭点Ndの、ブラウン管の中心(捜索者)から見た第1点目で表示され、距離エラーErは150m以内である。実験結果でこの値は、厳冬期、濃霧の北海やバルチック海などで、救命いかだのマーカーランプを肉眼で発見する為に十分なErと言える。
9GHz帯の電波は光に似て直進する性質を持っており、有効到達距離は、SARTとレーダーのアンテナ間の見通し内に限られる。後述の、日本製のサンプルに対して、日本、米、英、西独、北欧、ソ連などの多くの主管庁が、それぞれ評価目的を分担して国際的強調の下で実験した結果では、地球の湾曲で電波が遮られる船舶用レーダーの場合は最大10NM、見通しのとれる航空機用レーダーでは最大60NM程度の有効距離になり、理論ともよく一致する。
1.3.2 SARTの原理
図3−5が示すようにSARTの鋸歯状に掃引されている周波数の内、レーダー受信器の受信周波数帯域巾Br(MHz)の部分だけが受信されて櫛の歯状の映像信号fとなり、等間隔多点のSARTコードが表示される。捜索員に対するコードの視認性を良くするためには各点が明るく大きい事が必要である。
a. 各点の円周方向の巾 h
図3−5のSARTコードの各点は、レーダーアンテナがSARTの方向に向いた際に、レーダーアンテナの水平面指向性の巾θの間に複数回h(ヒット)受信されるSARTの応答波により、ブラウン管の電子ビームが複数回蛍光膜を叩く事による残像の積

 

 

 

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